プーリーが(やっぱり)いる風景

プーリーが(やっぱり)いる風景スマートフォンのカレンダーを見てはっと気づいた。

プーリーが、この「ミユキハウス」にやって来たのが2月18日。

そうか、もう2か月余りになるのか。

長い時間が過ぎていったようであり、あっという間の2か月余りだったような気がする。

プーリーが来てからしばらくたったころの話は前回にレポートし、たくさんのひとに面白がってもらった。

 

散歩の途中で、プーリーが突然狂気に襲われ、自分がつながっているリードに噛みつき、ウーウー、グルルル、ガオガオ、食いちぎろうとするかに振り回して暴れるので、私がハーネス、胴輪をぐいと持ち上げ、荷物のように吊り下げてやると、どうしようもなくただだらしなく、惨めっぽくぶら下げられている。

そのあとで地面に降ろしてやると、ああ、恥ずかしかったとでもいうように、すたすたと歩き始める。

この、狂気解消法発見を得意げに報告したところ、なるほどそうなんですか、といった、同病相憐れむような感想ももらった。

皆さん、困っていたんですねぇ。

 

そして、私とみゆきに守られて、昔からそうしていたかのようにのったりと暮らしていたプーリーで、その姿に私たちも安心していたのだが、さすがに2か月も過ぎたいま見ると、あのころとはいささか変わってきていることがわかる。

そこで今回は、その後のプーリー、いまのプーリーという重要な案件について報告しましょう。

 

プーリーが(やっぱり)いる風景もともと甘えん坊のプーリーだったが、最近はさらに、さらに甘ったれ。

特に私に対しては、ほんのわずかなときでも離れているのがいや、というほどにべったりしてくる。

夜は当然のように私のベッドの上、というよりベッドの中で朝まで眠り続ける。

朝になってみゆきが迎えに来て、ようやく顔を出し、抱きかかえられて階下に降りる。

朝のおしっこのために庭に出してもらうが、そのあとに朝食のカリカリを食べると、一目散に2階に駆け上がってくる。

私がまだベッドにいるときには、当然のようにプーリーも上がってきて、中に入ろうとするが、私がすでに起きてしまっていると、一緒に下に行こうと、フンフンと鼻を鳴らす。

プーリーは、階段を駆け上がることはできても、降りることは、怖くてできないのだ。

だから、うっかり上がってしまって、階段の上で情けない声を出していることもよくある。

 

プーリーが(やっぱり)いる風景みゆきがピアノを弾き、私がソファで本を読んでいるような時間、プーリーは当然私にくっついている。投げ出した脚の上に猿の乗馬のようにまたがったり、本を表紙側から読むように顔を押し付けてきたり。

私が2階に上がったり、トイレに立ったりするときは、ついてこられると面倒なので、部屋のドアを閉めて出るのだが、そんなときには閉まったドアに顔を押し付けるようにしてフンフン。

そこにみゆきがいるというのに。

 

どうしてこのようにベッタリコンになったのか。

みゆきがしたり顔に解説する。
「マンションにテリーと暮らしていたころは、別にくっついていなくてもすぐそばにテリーがいたから、なんの不安もなかったのが、いきなり広い家に移ってきて、少しでも離れるとテリーがいなくなってしまうっていう恐れが出てきたんじゃないかしら」

なるほど、そんなことかな、と思いかけたとき、みゆきはさらに続ける。

「普通の家から急にベルサイユ宮殿に越してきたみたいなものでしょう」

へぇ、じゃキミはマリー・アントワネットかね。オスカルかな。

 

プーリーが(やっぱり)いる風景ベルサイユ宮殿はともかくとして、プーリーにとって環境の変化、一緒に暮らす家族が変わったことは大きいかもしれない。

これまで、プーリーが自宅で接する相手は、あくまで私ひとりだった。
だが、「ミユキハウス」にはみゆきがいる。

みゆきと私は、大体がくっついている。いい方を変えると、べたべたしている。

プーリーとしてみれば、私にべたべたするライバルが生まれたわけで、さらにくっついていなければ不安になる。

そんなことじゃないのかな。

 

だが、プーリーはみゆきに対してもべったりしたいのだ。

基本的に、ご飯をくれるのはみゆきだし、散歩にもつれていってくれる。

そしてなによりも大事なのは、みゆきがやさしいことだろう。

プーリーが(やっぱり)いる風景叱ることがまずない。

ご飯を食べても、おしっこをしても、うんこをしても、みゆきママは褒めてくれる。

テリーパパのように、「早くしろ!」「こんなところでするんじゃない!」と叱ったり、ときにはポカリとしたりすることなど、まずない。

だからプーリーは、私には仕方なく、宿命的に、防衛本能的にくっついているが、本当はママが好きなのだと思う。

みゆきが、買い物や用事で出かけるときには、それまで私の脚の上にいたプーリーは、いそいそとついて行こうとする。

だがそうはいかないので、私も一緒に玄関を出る。

プーとふたりでの、お見送り。

庭の先のフェンスの、郵便受けの石柱にプーリーを抱き上げて乗せ、みゆきを、みゆきの車を見送る。

この姿は、近所のひとたちのあいだで話題になっているらしい。誰かがいっていた。

 

プーリーが(やっぱり)いる風景みゆきをお見送りしたあと、プーリーはしばらく庭で遊ぶ。

遊ぶといっても走り回ったりという「ガキっぽい」ことはせず、庭全体に植えられている草や木の葉っぱをかじる。かじるというよりは、食べる。むしゃむしゃ、食べる。

特にお気に入りは、玄関近くの大きな木の下の低木の葉。

2,3本の低木に、以前はみっしりと集まっていた緑の葉が、プーリーに毎日食べられて、いまではわずかに茎を残すばかり、丸裸にされてしまった。

その葉があるうちはほかの葉には見向きもしなかったのだから、よほどおいしいのだろう。

「天ぷらにしたらおいしそう」

と思うが、この写真でなんという植物か、わかるひと、教えて。

 

プーリーが(やっぱり)いる風景みゆきは叱らない、と書いたが、プーリーにも、ママには叱られないという安心感か、甘えがあったのだろう。

叱られたときの落ち込みは、かなり大きい。

あるとき、プーリーはみゆきに引かれて散歩から帰ってきた。

いつもなら、待っている私に飛びついたり、がぶがぶと水を飲んだりして、しばらくは興奮状態なのだが、その日に限ってようすが違う。

とぼとぼとうなだれて歩いて、ピアノの下の大きなクッションにそっと乗り、身体を小さくするように丸くなっている。

眠いのではないことは、プーリーがキョトキョトと眼を動かして、周りを探っているようすでもわかる。

そして、そのときのプーリーは、これまでにもあまり見ることのなかったほどに、ブス、だった。

叱らない、と思っていたママに叱られたのだ。

浜を散歩していたプーリーが、なにかに興奮したのか、みゆきにはまず見せることのなかった例の狂気を発揮したのだった。

プーリーが(やっぱり)いる風景グルグルうなりながらリードに飛びつき、くわえて振り回し、強く引っ張り。

みゆきもしばらくは我慢していたのだが、調子に乗ったプーリーは、みゆきのバッグにまで飛びつき、噛みつき、中のものを砂浜にぶちまけた。

バッグに入っていたコーヒー入りのポットも落ち、浜の石ころか何かに当たってふたが外れてコーヒーがこぼれた。

みゆきが、初めて叱った。

プーリーを強引にお座りさせ、頭を押さえつけて、顔を見つめて「NO!」と強い口調でいい、そのまま見つめ続ける。

プーリーも、次第に興奮が収まり、いけないことをした、との反省が生まれてきたらしい。

少しずつうなだれて来て、上目遣いにママを見て、困ってしまって、クーンと甘えてみても、まだママは笑わずに見つめている。

こうしてプーリーは、小さくなって、ブスになって帰って来たのであった。

いつも叱らないひとが叱るから、このように効果が出る。

 

プーリーが(やっぱり)いる風景プーリーの恥ずかしい話をしたので、ここでは少し汚名挽回、名誉回復を。

 

プーリーが唸りながら吠えながらリードに噛みつき振り回すのは、決して狂気ではなかった、というお話。

ついしばらく前までフレンチブルドッグを飼っていたある知り合いが、みゆきにいったそうだ。

 

それがフレンチの特徴で、狂気でも反抗でもなく、生活に必要な遊びであり、エクササイズでもある。

だからフレンチには、子供のころから太いロープの結び目のようなおもちゃをくわえさせ、引っ張らせて遊んでやることが必要で大切なのだ。

それをしないから、欲求不満が出て、散歩のリードに噛みついたりする。

 

プーリーが(やっぱり)いる風景なるほどそうだったのか、と大いに反省した私たちは、散歩中にプーリーを叱らなくなった。

ぶら下げて恥をかかせることもしなくなった。

その代わり、リードをくわえるプーリーに対抗して、こちらも引っ張り返す。

「グルグル」「ウーウー」に対して、

「よいしょ」「よいしょ」と頑張って。

これを路上でするのは少し恥ずかしいが、わざと笑いながら、声を出しながらなら、ああ、遊びなんだな、とわかってくれるだろう。

こうして、5分ほど遊んでやると、もうプーリーも満足して、その後の散歩は穏やかで、幸せなものになる。

この遊びを、

 

タグ・ウォー(綱引き)エクササイズ

 

といいます。

 

 

プーリーが(やっぱり)いる風景



 

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