テレビの悪口  

なん回か前のこの場所で、次回はテレビの話でもしようか、と書いた。

それなのに次の回もそのまた次も、テレビとはまるで関係のないことを書いていたので、どうしたの? なにか忘れていませんか、という問い合わせというかクレームのようなメールをいくつかもらった。

そうなんですよ。テレビの話ができない事情が生じたのであります。

当初、ウィークデイの昼間に放送されているいくつかの番組を取り上げて、からかい半分の感想を述べようと思っていたのは事実。

どの番組かといえば、小倉なにがしの「特ダネ」(フジ)、なんとか浩二の「なんとか」(日テレ)、惠だれそれの「ひるおび」(TBS)、宮根某の「みやね屋」(日テレというか読売テレビ)の4つの番組をふつかにわたって(!)つぶさに検証し、ああだこうだといってやろうとしたのだ。

 

誰もが感じていることだろうが、まず、どれもこれも全くといっていいほど同じ内容。同じ切り口。これならばどれかひとつの番組を見れば十分。あとの時間をほかのことに費やしたほうがよほど有意義ではないか。

さらに、4つの番組ともに、意味のないコメンテーターが数人必ず出ていること。

そのときに取り上げるテーマに関する専門家、研究者、実際に関わったひとが、というならともかくまるでのドシロートがもっともらしい発言をするのが無意味。それどころか有害でさえある。

たとえば惠の番組の、元クラリオンガールという膨らんだ女性など、なにを聞かれても、

「むずかしい問題ですね。うーん」

「困ったことですね。うーん」

宮根の番組の、スイスからやってきたモノマネタレントの女の子は、政治や経済のややこしいテーマに、見当はずれのコメントを、もっともらしいドヤガオで入れてきたり、それこそ「困ったことですね。うーん」といいたくなる。

 

どうしてこういう存在が成り立っているかといえば、司会者のせいに違いない。

なにに対しても専門外でしかない司会者は、居並ぶコメンテーターに万遍なく話を振ることのみに専心し、特に宮根に至っては話の途中に必ず「ねえ、××さん」と呼びかけて、その××が続いてしゃべるように仕向ける。機会均等にしようとしているのだが、だから消費税の問題を野球選手が語ったり、お笑いタレントが日中問題について述べたりする。

人間には表現の自由がある。誰がなにをいってもいいじゃないか、という向きもおありだろうがですよ、道端の立ち話おばさんや、居酒屋の割り勘サラリーマンならともかく、公共の番組ではそれは通用しない。昔はこうしたことを“床屋政談”といって馬鹿にしたものだ。

ひとりでも、「わたしはそのことについては専門外だし、勉強もしていませんから」と断るコメンテーターはいないものか。2度とテレビには呼ばれなくなるだろうが。

 

もうひとつ。特に惠と宮根だが、どこか遠くの現場で取材している記者やレポーターの電波を通しての話に口を挟んで、自分も参加しようとするのが困る。

うるさいばかりではなく、電波のレポートにはタイムラグがあるので、相手のレポートの何秒か進んだときに話の腰を折ることになって、聞きにくい。レポーターもせっかく作ったコメントをぶち壊されて迷惑なはずだ。

惠も宮根も、あくまで自分が中心で番組を進めたい。視聴者の笑いを取るのは自分でしかあり得ない。そう考えていることは、例えばあるコメンテーターふたりが面白いアドリブジョークの掛け合いで周囲がどっと受けたとき、惠が、

「まったくやりたい放題だな」

と不快気にいったことでもわかる。

いいですか。レポーターや記者はテレビの向こうの視聴者に話しているのであって、惠や宮根にだけ語りかけ報告しているのではない。

 

記者、レポーターにも問題がないわけではないよ。

ともかく程度が低すぎる。

無知識なのは、専門外なので仕方がないし、知らないことだから取材しているのだが、彼らの唯一無二の専門であるはずの日本語があまりにもお粗末。というか、日本語が苦手な連中ではないか、とも思える。

例を挙げればきりがないから、極端なひとつを。

どの、どこのレポートにも必ず見られるのが、“状況”“状態”の言葉の乱用。

この言葉を使えば、レポートの格が上がる、とでも思っているのか、なにに関しても、

「といった状況です」

「現地の状況をお知らせしました」

あまりのことにあきれた例をもうひとつ。

台風の現地から。

「こちらの状況はですね、(役場の係官が)この海岸の状況を、どんな状況か見に来ている状況です」

バカヤローですね。まったく。

 

テレビについて書かない理由をいおうとして、結局全部書いてしまったじゃないか。

実はですね、いまの4つの番組について書くつもりで、テレビの前にカメラを構えて坐って、いくつも写真を撮ったのではありますが、その写真を、たとえブログであっても無断で使用すると、著作権法に引っかかると、あるひとにいわれて、じゃやめとくか、となった次第であります。

ま、それでも書いてしまったわけなので、それもいいか、と、わけのわからない結論でした。

面白いな。次回もテレビの悪口、書こうかな。

 


Backnumber

浜辺の上の白い部屋 | ジェイコブスラダー | 初めての雪、終わった雪シーサイド葉山の呪縛

40年余り昔 | 花粉症のおはなし | 浜は生きている |つまらない健康おやじ

いま死ぬわけにはいかんのだ | 夏の初め、浜の応援団 | 夏の初め、海の体育祭

何回目かのいいわけが始まった | ヤンキーな夏が逝った | 奇跡のシャンパン物語

ハスラーがやってきた | 孤独な老人のひとりごとひと夜の臨死体験"ぶぶはうす"巻き込み計画